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IWATE AIR/AIR『夜明けの国のコッコ・ドゥードゥル・ドゥー』

『夜明けの国のコッコ・ドゥードゥル・ドゥー』(2023)

撮影:井田裕基

2022年度のIWATE AIR/AIRプログラムに振付家・ダンサーの木村玲奈と共に参加し、岩手県宮古市での滞在制作の成果として上演した。

宮古には、「是津親王伝説」という貴種流離譚が残っている。
推古天皇の弟宮が宮古に流され、ひとり暮らしていた。
流刑の身を悲しんだ皇子はついに海に身を投げ命を絶ってしまう。
地元の人々は貴人にふさわしく丁寧に埋葬したいが、遺体が見つからない。
そこで、皇子が可愛がっていた鶏を乗せて船を出したところ、ある入江で突然鳴き出した。海を探ると、皇子の亡骸がそこにあった。皇子が埋葬された塚が後の「黒森神社」となり、遺体が見つかった地域は「磯鶏」と名付けられた。

木村/山田は、この実在しなかったであろう皇子の生活を想像し、平安貴族なら歌会を開いたはずだと考えた。そこで、磯鶏地区にある宮古市民文化会館の舞台上で、観客を招いて「カラオケパーティー」を開催した。皆で歌い、あるいは一人で好きに過ごし、あるいは騒音にまぎれて一対一の親密なコミュニケーションが行われる「歌会」である。

カラオケパーティーは時折電話で中断される。電話の向こうにいる人は、どうやらこのカラオケパーティーが行われているのと時刻を同じくして、春に避難指示が解除される福島県富岡市内の帰宅困難区域の海を視察しているらしいことが次第に分かってくる。

演出家:山田カイル
振付家・ダンサー:木村玲奈
声の出演:秋元菜々美

主催:NPO法人いわてアートサポートセンター
協力:宮古市民文化会館