昨年、京都と東京で異なるパフォーマーによる4バージョンを上演した「1(忘)LDK」を、中間アヤカさんが新たに神戸にオープンするスペース、house next door にて上演いたします。24年3月には Dance Box 神戸の「ダンストライアルプログラム」、4月には台湾の Want To Dance Festival でも上演された野田容瑛ver. にくわえ、今回の上演に向けて新たに創作される中間アヤカver. を上演します。
上演を繰り返す野田ver. が新たなスペースでどうなるのか。新たなスペースと共に生まれる中間アヤカver. はどのようなパフォーマンスになるのか。ぜひ劇場に足を運んで、目撃してください。
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パフォーマー:中間アヤカ、野田容瑛
コンセプト:山田カイル×ジュネスホワイト
インストラクション:山田カイル
【タイムテーブル】
5月25日 14:00
5月26日 14:00
受付・開場は各回開演30分前です。
休憩を挟んでの2本立て上演になります。上演後には出演者によるトークを実施します。
【料金】
前売り:¥2,000
高校生以下:¥1,000
未就学児:無料
当日券は各¥500増し
【予約方法】
Google Forms: https://forms.gle/7kfdRk3oQFXHbuEA9
【会場】
house next door
住所:神戸市長田区二葉町3丁目12-4
(JR新長田駅より徒歩約10分。丸五市場と本町筋商店街の間の路地)
【概要】
「1(忘)LDK」は、アーティストデュオのジュネスホワイトと劇作家・演出家の山田カイルによる、鴨長明『方丈記』のリサーチから出発したプロジェクトです。方丈記というテクストが書かれた時代のこと、京都という町のこと、「方丈」の小屋のことなどのリサーチを元に、山田カイルが3m四方の空間でソロパフォーマンスを作るための「指示書」を執筆しました。これまで、4人のアーティストがそれぞれ同じテクストを元に、自分だけの「1(忘)LDK」のパフォーマンスを作り、上演してきました。劇場のほかにも、レストランの屋上、ボルダリングジムなど、ユニークな空間での上演を重ねています。
方丈の小屋での孤独な生活に平穏を見出した長明。私たちは、現代社会の隔離と孤独のなかに、自由や希望を見出すことができるでしょうか?昨年創作した自らのパフォーマンスを様々な場所に置き換えながら国内外で上演を重ねる野田容瑛と、神戸に新しい創作の場を作ったばかりの中間アヤカによる2本立ての上演です。繰り返される上演が、新しい空間と出会うことで、どのように変わるのか。新たな空間が「方丈」と出会うことで、何が生まれるのか。
公演メンバーからのコメント
「家と住人」
「アヤカさんの新しいスペースで『1(忘)LDK』をやりたいんです。」と相談を受けたのは、後にhouse next doorとなる長屋の改修工事が始まって間もない頃で、前の住人の表札がまだ残っているような状態であった。立つ舞台がどんな場所になるかも想像の付かない中で、よく声をかけてくれたと思う。表現を志す人間というのは、都市の中にぽっかり空いたスペースを目ざとく見つけ、やっていくものなのでしょう。10年前に一人きりでここに暮らしていた人のことを近所の人たちはよく知っていて、工事の最中に顔を覗かせてはその人の思い出話を聞かせてくれた。酒を飲みすぎて倒れたその人を何度もこの家に運んできたのだと。そんな記憶を受け取りつつも、私は、私の『1(忘)LDK』を踊りたいと思います。
中間アヤカ
「折りたたみ1(忘)LDK」
「ひとりで創り、ひとりで上演すること」がコンセプトのこの企画で、最も楽しいのが他の人がつくった作品を見る瞬間。これまでに私を含め4人のアーティストが上演してきた。表現の手段や内容は千差万別で、インストラクションが改めて無数の可能性に開かれていることを実感する。同時に、「1(忘)LDK」を上演する私たちはみんな同じ家に住んでいるかもしれない、というような気もしてくる。時間も場所も間取りも住人も異なるのに、同じ家かもしれないという不思議な錯覚。すると今度は自分の上演のとき、まるで「ひとり」ではないような感覚が訪れる。これまでに上演してきた場所とパフォーマーの実践の記憶がインストラクションに宿っている。見えなくてもそこにある気がする。世界の痕跡の上で自分の上演の時間を過ごす。
きっとこのインストラクション自体が、仮の宿りとそこへ住まう人を求めている。アヤカさんとともに、house next doorでこのインストラクションに向き合えることがとても嬉しい。ここで踊り、また移動を続ける。
野田容瑛
「いくつもの『方丈』」
『1(忘)LDK』は、昨年、ジュネスホワイトの二人と一緒に『方丈記』のことを調べて作った作品です。その時に知ったのですが、鴨長明が住んでいたような「方丈の小屋」を建てるのは、結構流行っていたそうです。長明は時代を憂いたオンリーワンの隠遁者ではなかった。各地の霊山などに多くの僧侶が一部屋だけの小さな小屋を立てて、日々祈りながらそこに暮らしていたのです。たとえば熊野の山中には、多い時は数百もの小屋が立っていたといいます。何百もの僧侶が、密集した小屋のなかで、一人きりで暮らしていた。つまり、都市があったと言って良いでしょう。「一人きりの人々が並んで暮らす」というのは、長屋暮らしも連想させます。元々長屋であったhouse next doorでどのような上演が生まれるか、是非、観にいらしてください。
抗原劇場 山田カイル
【プロフィール】
中間アヤカ
別府生まれ、神戸在住のダンサー。英国ランベール・スクールでバレエとコンテンポラリーダンスを学んだ後、文化庁・NPO法人DANCE BOX主催「国内ダンス留学@神戸」1期に奨学生として参加。これまでに多くの舞台に出演し、近年は自身の作品創作に積極的に取り組んでいる。近作に『フリーウェイ・ダンス』(2019)、『踊場伝説』(2023)など。「鑑賞」を超える「体験」として、観客の身体の記憶に結びつくような複雑な要素を用いる多孔的な作品が特徴。「ダンスとしか呼ぶことのできない現象」を追い求め、それが現れる瞬間を他者と共有するための「仕掛け」を創り出す。第16回神戸長田文化奨励賞受賞。セゾン文化財団2024年度セゾン・フェロー。
野田容瑛
広島県出身。東京、台北、神戸、大阪を経て現在は京都を拠点に活動。NPO法人DANCE BOX「国内ダンス留学@神戸」4期振付家コースを修了。大学在学中に自らのルーツのひとつとして台湾の言語と文化を学び始める。2018年よりダンサーの桂阿子とアートユニット「ジュネスホワイト」を結成し、創作の土壌を耕すためのバーチャル・シェア・アトリエとしてサイトを運営中。
山田カイル
劇作家、演出家、ドラマトゥルク。抗原劇場代表。1993年テキサスに生まれ、その後青森で育つ。大学院在籍中にダンスドラマトゥルクとしてキャリアをスタートし、修了後、自身の演劇活動を始動。近作に、小栗判官の伝説を現代に翻案した『熊野ヒッチハイク・ガイド』、ダンサー・振付家の木村玲奈と共に岩手県宮古市の民話をリサーチし上演した『夜明けの国のコッコ・ドゥードル・ドゥー』、人類滅亡後の世界を動物や超常的な存在のモノローグで語る『雨降らす巫女の定置網漁』など。またArt Translators Collective のメンバーとして通訳/翻訳も行っている。
主催:抗原劇場
共催:house next door
問い合わせ:allergen.theatre@gmail.com
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